Report14<SURVEY>

日本のケーブルテレビ 2025 
総接続世帯、多チャンネル、インターネットほか動向 《全国調査 第65弾》

 弊社では平成2年(1990年)から毎年3月期と9月期の年2回、多チャンネル放送サービスを行うケーブルテレビ局加入世帯数調査を行っていたが、調査を月刊放送ジャーナル誌(2021年休刊)から本紙放送ジャーナルレポートに移行し、年一回の調査とし、このほど令和6年度(2024年)9月期の第65弾調査結果がまとまった。結果詳細は弊社発行「旬刊CATVジャーナル 増刊号」にて報告するが、この放送ジャーナルレポートにおいては要約版として掲載する。本調査はケーブルテレビ事業者に対するアンケートによるもので、基本的にケーブルテレビ事業者の回答がすべてである。未回答のものもあり、ごく小規模事業者は対象外となっている。また、ローカル5G、地域BWA、ケーブルスマホといった、昨今普及しつつある無線系サービスに関しての調査も行っている。(編集部)

総接続世帯数2755万、多チャンネル724万

 調査対象となっている多チャンネル放送サービスを行うケーブルテレビ局の数は前回と同じ340局となった。今回の対象局における許可エリア内総世帯数は約5697万世帯となり、前回(前年9月期)より3.3%の増加、ホームパス(ケーブル敷設工事完了エリアの接続可能世帯数)は約5319万世帯で1.08%の増加、総接続世帯数(電波障害対象施設なども含む全ての接続世帯数。再送信サービスだけを受けている世帯も含む)は約2755万世帯で0.53%の増加。エリア内総世帯数が伸びたことで、ホームパス、総接続世帯数などケーブルテレビサービスのベースとなる数字は順調に増加し、対象局数がおおむね現在の数字になった令和元年以降でも、ほぼ同レベルの増加割合である。
 各サービスを見てみると、多チャンネル契約世帯数は6年連続のマイナスの2.2%減の約724万世帯とH27年9月に8.0%減となって以来の大きな下げ幅となった。対してインターネット契約数は2.5%増の約864万件となり、令和2年に多チャンネル契約者数を上回って以来、両サービスの差はさらに広がり、件数は2年前に800万を越えてから早くも800万台半ばとなっており、まだまだ伸びしろがある。一時期契約者数を伸ばしていたケーブル電話契約者数は令和2年をピークに徐々に減少してきている。ホームパスに対する割合を見ると、総接続世帯数は51.8%と前回比0.3ポイント減となっている。多チャンネル契約世帯数は13.6%で前回より0.5ポイント減少している。

総接続世帯比率は減少も1社平均は伸び

 接続総世帯数と多チャンネルサービス推移に関するグラフを以下にまとめた。色のついた面グラフがそれぞれの実数、対ホームパス比率である総接続世帯比率は折れ線の点線、全接続世帯数を対象局数で割った、1局あたりの平均総接続世帯数をグラフ実線で表している。これをみると、ケーブル局の合併などで対象局数が減ってきていることなどもあり、総接続世帯比率は頭打ちになっているが、1社あたり平均接続世帯数はまだ伸びが続いている。
 右のグラフは、多チャンネル、インターネットに加え、ケーブル電話も含めた3サービスの推移を比較したものである。インターネット契約者数が多チャンネル契約世帯数を逆転したのは令和2年、多チャンネル契約数のピーク時の数字(平成27年3月)を抜いたのが令和4年だが、さらに増加は続く。グラフをみると多チャンネルは減少傾向となっているものの、インターネットの伸び幅に比べれば、減少割合は小さく、トップの座は譲ったがケーブル事業の有力なサービスの位置づけはまだ続くであろう。一方でケーブル電話の契約者数は減少傾向が続くが、固定電話自体のニーズが小さくなってきていることも影響している。

総接続世帯数と多チャンネルの推移
3サービスの契約世帯数推移

新インフラの動向は、個人サービスの
    ケーブルスマホ、ローカル5Gに伸び

 次に新インフラを活用したサービスである、地域BWA(Broadband Wireless Access)、 ケーブルスマホ、ローカル5G、に対する各社の取り組みの状況で、今回で4回目となり、徐々に傾向が見えてきた。
 調査についてはそれぞれのサービスについて、「提供している」「予定がある」「検討中」「未定」の4択形式で、今回、回答は全340局中192局。結果を次ページのグラフに記した(パーセンテージは、回答局数に対する比率)。
 まず、「提供している」という回答が多かったのが40.1%のケーブルスマホで前年から2.4ポイント増え4割を越えた。地域BWAは37.5%でこちらも前年より2.2%増加。「予定がある」「検討中」まで含めると、ケーブルスマホは45.8%と3.1p増、地域BWAは42.7%と4割は越えているものの前年よりも1.1p下がっている。
 ローカル5Gはベースの5Gサービス自体のインフラ構築が徐々に整備されてきている影響もあり、1昨年の4.7%、前年6.4%、今回6.8%と徐々にではあるが連続の増加である。これらをみると地域BWAに対して、個人ベースのサービスであるケーブルスマホと、ローカル5Gの伸びが目立ってきている。

ケーブルスマホ
地域BWA
ローカル5G

様々な形態がみられる各局独自の他事業展開

【地域おこし、地域プロモーション】
・エリア内イベントプロデュース[大垣ケーブルテレビ(岐阜)]
・コミュニティFMの開局予定[杵築市(大分)]
・地域のイベント企画、観光PR映像制作[嶺南ケーブルネットワーク(福井)]
・地元自治体との協働によるSDGs地方創生事業展開/地域の歴史、伝統、文化をIP(財産)として捉え、コンテンツ化、新たな価値の創造[こしの都ケーブルテレビ(福井)]
・市文化ホールでの映像機器システム運用・ホール関連コンテンツの制作[四国中央テレビ(愛媛)]
・アーカイブ、スポーツ大会中継[宮古テレビ(沖縄)]
【防犯・地域安全】
・防犯カメラ、家電販売(予定)[YOUテレビ(神奈川)]
・地域防災カメラ[湘南ケーブルネットワーク(神奈川)]
・B2B/G向け防犯カメラサービス[ひまわりネットワーク(愛知)]
【電力・エネルギー】
・電気事業[ケーブルテレビ(栃木・茨城・埼玉)]
【地域生活支援・文化事業】
・ハウスクリーニング事業[東京ベイネットワーク(東京)]
・地元の不動産会社と連携して住まいのお困り事(水漏れ修理、除草、電球交換など)サービスを提供[愛媛CATV(愛媛)]
【地域DX支援】
・スマホ修理サービス、パソコンデータ破壊サービス[蕨ケーブルビジョン(埼玉)]
・自治体の公共交通機関であるデマンドワゴンのコールセンター業務[佐久ケーブルテレビ(長野)]
・自治体営業(水位センサー等の実証実験)[秋田ケーブルテレビ(秋田)]
・地域ポータルサイトの運営[新川インフォメーションセンター(富山)]
・SNS用プロモーション動画制作 ・パソコン・スマホ端末の出張設定[臼杵ケーブルネットワーク(大分)]
・360°カメラによる地域アーカイブ[石見ケーブルビジョン(島根)]
・自社で開発・運用している地域情報アプリ「ゆめのわ」[笠岡放送(岡山)]
・指定管理者制度に基づく子育て就労総合支援センターの管理運営業務[Goolight(長野)]
・オンライン診療、少額短期保険サービス[ジェイコム東京(東京)]
【農業】
・農業[入間ケーブルテレビ(埼玉)]
【その他】
・電子書籍事業/ECサイト運営[宇都宮ケーブルテレビ(栃木)]
・家電販売[広域高速ネット二九六(千葉)]
・立体マップ作成サービス(360°ビューイング)[東京ケーブルネットワーク(東京)]
・ケーブルテレビコンテンツをアプリで配信できる「ロコテレ」。現在、全国のケーブルテレビ事業者向けに提供を拡大[ニューメディア函館センター(北海道)]
・ケーブルラジオ[アイ・キャン(山口)]
・放送コンテンツ海外展開プロモーション[Goolight(長野)]
・LINEマーケティングにおけるケーブルテレビ事業者専用パッケージサービスの提供・ケーブル事業者向けデジタルマーケティング支援[こしの都ケーブルテレビ(福井)]

 また、上記以外で新規参入してみたい事業としては、再生エネルギー分野、自治体へのガバメントクラウド接続サービスの提供、顧客対応における生成AI活用とケーブルテレビ事業者パッケージの提供(局名省略)などが挙げられた。

 ホームパス、総接続世帯数、ネットは増加
     多チャンネルは上位者も減少大きい

 各項目の契約世帯数のランキングを表に記した。トップ10社では順位は大きな変動はないが、各項目若干の入れ替わりがある。ホームパス、接続総世帯数、インターネットは上位10社はおおむね(回答無しを除き)前年比で増加、ホームパスは上位10社が100万世帯を越えた。多チャンネルと電話サービスは減少が目立ち、多チャンネルでは、ジェイコムウエストの減少が大きく、トップが入れ替わった。ZTVは多チャンネルとインターネットで順位を上げている。
※印のものは今回の調査で回答が得られなかったため、前回の回答をそのまま流用している。

ホームパス 上位10社

総接続世帯数 上位10社

多チャンネル契約世帯数 上位10社

インターネット契約世帯数 上位10社

電話サービス契約世帯数 上位10社