Report 2<特別インタビュー>

HotクラウドストレージWasabiが日本のメディアビジネス拡大へ
~低価格 × ハイパフォーマンス × セキュアサービスである理由~

 

デジタルファーストが進むなか、メディア業界にとってクラウドストレージの活用は注目度が増している。これまで以上に高解像度で制作されている膨大な量のコンテンツデータ保存に対して、Wasabiテクノロジーズは低コストかつハイパフォーマンスで安心安全なクラウドストレージの提供を実現する。Wasabiテクノロジーズジャパン日本法人代表黒田和国氏にWasabiのバリュープロポジションについて話を伺わせてもらった。 (取材・文責 放送ジャーナル編集部/文中敬称略)

業界最大手競合他社と比べて

ストレージ料金は5分の1に削減可能

本 誌:本国アメリカにおいて2015年に創設し、日本市場への参入は今年6月からと、事業拡大が進んでいますが、クラウド市場においてWasabiはどのようにポジショニングを築いているのでしょうか。

黒 田:Wasabiのミッションは低価格、ハイパフォーマンス、セキュアオブジェクトストレージの提供です。アクセスとコストの観点から「ホット」と「コールド」の両方の定義を満たすストレージサービスをすべて単一の価格帯で提供するため、より広範なパブリッククラウドIaaS市場の中で非常にユニークなポジションです。Wasabiの主な強みと差別化要因として、プラットフォームのシンプルさと高性能なストレージサービスにあります。Wasabiは、単一のストレージ階層で単一の料金で提供しています。これは、顧客がデータアクセスのための ingress と egress 料金または追加コストを管理する必要がないことを意味します。非常に魅力的なバリュープロポジションだと考えています。特にストレージのコストが顧客にとって大きな問題となっているコールドストレージ市場では特にそうです。また、オブジェクトへのミリ秒のアクセス時間やエンタープライズクラスのデータの可用性と耐久性など、通常はホットストレージに関連する機能を備えた優れたバリュープロポジションを用いています。これらによって、Wasabiはコールドストレージ市場でこのようにユニークで用途の広いプロバイダーとして成長しています。

世界最高峰のデータセンター、最先端のハードウェアによって、セキュアかつ耐久性に優れたパフォーマンスの高い高性能クラウドストレージを提供するWasabiソリューション。(提供:Wasabi Technologies,Inc.)

本 誌:競合他社と比べた場合、Wasabiの差別化ポイントは何であるとお考えですか?

黒 田:Wasabiのバリュープロボジションについてもう少し詳しく説明させてもらうと、1つ目はプライス面にあります。例えば、最大手AWS(Amazon Web Services)のS3のストレージ料金と比べて5分の1に抑えることができます。さらにegress とAPI リクエストに課金の必要なく、無償で提供させていただいております。複雑なストレージ階層は一切ございません。例えば、平均30%のデータ転送量に対する1TBの年間コストは他社課金と比べて大幅に抑えることができます。2つ目のパフォーマンスにおいても競合他社より優れております。3つ目のプロテクションについても世界有数の企業にご採用頂いている理由にあります。データセンタ冗長、データ耐久性にといても競合他社に劣らず、ランサムウェア対策に有効な不変ストレージ機能も無償でご提供しております。

高速でエクサバイト規模のストレージを

提供するアーキテクチャ構築

本 誌:低価格提供を実現できる理由を教えてください。

黒 田:効率化を追求したソフトウェア開発に力を入れていることが理由の1つにあります。ホットクラウドストレージとしてパフォーマンスの要求が高く求められるため、Wasabiの技術陣が世界のクラウドストレージ市場の中で抜きん出て評価されるために、ソフトウェア開発に膨大な投資と時間を費やしました、そもそもなぜ効率化を追求したかと言うと、我々はサービス開始した時点からサービス提供コストを下げることが非常に重要であると考えていたからです。最先端のハードウェアテクノロジーを活用したWasabi技術で実現した高速ファイルシステムは大幅なコスト削減とパフォーマンスの向上を可能にします。それは他のパブリック・クラウド・オブジェクトストレージ・プロバイダーよりも高速で、エクサバイト規模のストレージを提供する高度に分散されたアーキテクチャを構築するものです。つまり、他社よりパフォーマンスが優れたシステムを構築することに成功したことによって、低価格提供が実現できているのです。

本 誌:データ耐久性やセキュリティ面においても重要視されていますか?

黒 田:エクサバイトスケールの11x9sデータ耐久性を持ち合わせ、複数のデータセンタを備えた99.99%の可用性SLA(サービス品質保証)を満たします。またアップロード時、ダウンロード時と90日ごとのデータ整合性チェックしています。セキュリティ面においては転送中および保存中の全てのデータを暗号化し、偶発的な削除や変更を防ぐ不変ストレージ機能も提供し、強力でセキュアなアクセスを実現できます。偶発的なデータ削除から守ることで、ランサムウェア攻撃への対策に大変有効です。もちろん、業界のプライバシー、セキュリティ、およびデータセンタへの標準規格の取得にも力を入れています。

350社以上のテクニカル

アライアンスパートナーと連携

本 誌:パブリッククラウド市場が年々増加するなかで、ますます重要なベンダーとして期待されていますね。

黒 田:パブリッククラウドIaaSは2020年に35%増加し665億ドルに、2025年までには2,000億ドルまでに成長する見込みです。こうした成長軌道のなか、Wasabiは、AWS、Google Cloud、Microsoft Azure、Oracle Cloud とともに、2020年の「Worldwide Public Cloud Infrastructure as a Service Market Shares」で「Who Shaped the Year」として認められました。さらにパブリッククラウドIaaS市場でますます重要なプレイヤーであり、過去3〜4年以内にIaaS市場への参入に成功した数少ないベンダーの1つとして、グローバルリサーチ会社のIDC様からご評価いただております。知名度は決して高くないWasabiが業界リーダーのAWSなどメジャープレイヤーと並び、高く評価されていることは大変重要なことです。

本 誌:AWSとの互換性や管理コンソールなど使いやすさも支持されている理由にあるのでしょうか。

黒 田:低価格や安全性だけでは支持されませんので、クラウドストレージと連携するアプリケーションは標準化されています。WasabiはAWS S3およびIAM APIを完全にサポートしています。AWS S3で使用しているアプリケーションを変更する必要はありません サードパーティのAWS S3互換アプリまたはプラットフォームはすべてWasabiで動作するように開発されており、350社以上のテクニカルアライアンスパートナーと連携しています。例えば、arcserve、Veeam、Akamai、Limelightや高速ファイル転送ソリューションを提供するベンダーなど充実したパートナーとビジネスを進めているところです。

 そして、重要なのは使いやすさです。Wasabi管理コンソールはAWSコンソールに似ており、バケット、キー、ユーザー、ポリシーなど同じ概念です。ですから、設定方法や管理がしやすいのです。 Wasabiが年率300%を超える成長率を示しているのは、こうしたテクニカルアライアンスパートナーやモデルが顧客にマッチしていることが背景にあります。

WasabiマネージメントコンソールはAWSマネージメントコンソールとほぼ同じく使用可能だ。(提供: Wasabi Technologies,Inc. )

世界トップの

メディアエンターテイメント企業や

アニメスタジオが採用

本 誌:メディア業界においてWasabiが採用されている理由は何ですか?

黒 田:Wasabiは生の映像から完成品まで、すべてのコンテンツファイルが保存できるクラウド容量の提供が可能です。もちろんアーカイブされたライブラリーからの配布も可能です。そして、すべてを1つの低価格で提供します。さらに、独自のコンテンツの使用に対して出力またはAPIリクエストの料金は発生しません。非常に優れたパフォーマンスによってファイルのローディングや配信を待つ時間を短縮し、全てのコンテンツに高速にアクセスできます。Wasabiは本番環境、バックアップ、アーカイブのすべてのニーズをすべて1つのクラウドストレージで賄うため、世界トップのメディアエンターテイメント企業やアニメスタジオで採用していただいているのです。

本 誌:ご紹介できる活用事例があれば教えてください。活用しているメディア企業はどのような効果を実感しているのでしょうか。

黒 田:ハリウッド大手制作会社のLegendary様はオンプレミスのストレージフットプリントを削減し、ストレージサイロを排除して全体的なクラウドストレージの費用を削減することがチャレンジにありました。Wasabiホットクラウドストレージはファイルへの迅速なアクセスを維持しながら、高価なTier1オンプレミスストレージをオフロードすることによって、結果、クラウドストレージ料金が予測できるようになったことに高くご評価いただきました。データ転送量が無償であり、予算予測が可能であることはLegendary様にとって、Wasabi選定の重要なポイントだったと伺っております。またプロダクション4th Rock様は柔軟性と大容量メディアファイルへのアクセスを改善するためにクラウドに移行を決めるなか、大量メディアァイル管理と予測不可能な転送費用の問題に直面していました。その解決法としてLimelight Networks、Wasabi、Signiant3社共同で、主要なクラウドベンダーよりも低価格で、高性能のメディア転送と安全なストレージを提供したところ、月額87%のコスト削減に成功されました。このほか、フィルム機器メーカー CTM Group様はWasabi採用によってストレージコストと複雑さを削減し、頻繁にアクセスしてアーカイブする作業のために無限のストレージライブラリーを作成でき、リモートワークを可能にしました。

クラウド移行のコスト問題解決は

大きなメリット

本 誌:日本の放送局などメディア企業にとって、Wasabiを採用するメリットについてご説明ください。

黒 田:アクセスが早く、なおかつ低コストのWasabiのホットストレージはメディア業界の皆さまにとって大変魅力的だと思います。日本市場に参入して数か月ほど経過するなか、パートナーの取り扱い先で最も多いのはメディア関連企業です。クラウド移行を希望される時に直面するコストの問題はWasabiの採用によって解決することができるからです。データセンタを持たないことで、電力費用を抑えることはできますが、全体コストとの兼ね合いを考える必要があり、こうした場合でもWasabiはTBデータの保存でもコストを下げることができ、アクセスも早いため非常に大きいメリットになるかと思います。それほど実はアクセスされないアーカイブのデータについてもコストに見合わず、データ保存を継続し続けるとひっ迫する問題へと繋がります。こうしたケースにおいてもWasabiはコストに見合うものです。またマルチクラウドの用途として、AWSをプライマリーとして、Wasabiをセカンダリーでのデータのバックアップとしてご活用することも有効です。こうしたWasabiの魅力について日本市場のメディア企業の皆さまにも訴えていきたいと考えております。

本 誌:NTTコミュニケーションズなどが日本のパートナー企業として挙げられます。今後もパートナーを通じて、ソリューション提供が行われていくのでしょうか。

黒 田:AWSなどは直販ビジネスで展開されていますが、Wasabiはパートナービジネスを展開しており、世界全体でWasabiのカスタマー数は3万社を越えます。日本国内においてもほぼ100%パートナービジネスで展開していく計画です。パートナー企業であるNTTコミュニケーションズ様とはデータセンタを採用させてもらい、連携しております。

本 誌:11月17日から開幕するInterBEEでビジュアル・グラフィックス社の出展ブースを通じて、Wasabiのクラウドストレージサービスがご紹介されます。

黒 田:メディアビジネスはWasabiにとって大きな大きなマーケットセグメントにあり、重要な市場として捉えています。InterBEEでのサービス紹介は初。パートナー企業のビジュアル・グラフィックス様と組みながら、ビジネス展開拡大を目指します。

本 誌:最後に展望をお聞かせください。

黒 田:メディア関連企業とのパートナーシップ関係を高め、放送局やプロダクションの皆様に対して、いかにWasabiが世界で最もホットストレージストレージをご提供できるのかということを訴えかけていきます。一方、Wasabiのアウェアネスを上げていくと共に、信頼を得て頂けるように、我々のビジネスについて今後もお伝えし続け、パートナー企業と一緒にソリューションを提供してきます。

本 誌:ありがとうございました。

【InterBEE展示概要】
11月17日開幕InterBEE2021(幕張メッセ)のビジュアル・グラフィックス出展ブースにてWasabiのメディア業界向けソリューションを展示。予約容量制ストレージ「Wasabi RCS」や短期間固定容量制ストレージ「Wasabi FCS 30/3」など。またAWS S3互換製品を持つパートナー企業を広く募集する。

Profile
黒田和国氏

APAC地域事業副社長兼Wasabiテクノロジーズジャパン合同会社代表執行役員社長。日本オラクル株式会社の通信事業統括本部 事業統括本部長などを経て、2021年2月、Wasabiテクノロジーズのアジアパシフィック(APAC)地域事業副社長に就任。

【Wasabiテクノロジーズ概要】

Carbonite共同創設者でクラウドストレージのパイオニアであるDavid Friend氏とJeff Flowers氏が2015年に創設。米ボストンを拠点とする株式非公開企業。APAC地域全体の事業を統括する日本法人は2021年6月24日に設立した。